2018年4月16日
「5つのナゼ」という有名な分析手法があります。「なぜなぜ分析」と呼ばれることもあるこの方法は、使いこなすことが出来ればビジネスでも日常生活でも大いに活躍してくれます。今回はこの「5つのナゼ」について少し紐解いていきます。
5つのナゼは製造業から生まれた
5つのナゼという分析手法はトヨタ自動車で生まれました。自動車工場の生産ラインで何か不具合や事故が起きた時に、それがなぜ起こったのかの"真の原因"を突き止める事を目的としています。以下の例は、生産ラインで発生した不具合について報告された「不具合報告」です。
①事象:製造しているパーツにヒビ割れが生じる不具合が発生。
②原因:ヒビ割れの原因を調べた結果、機械の歯車がわずかに欠損している事が判明。
③対策:歯車の交換を実施。
④結果:パーツにヒビが入る不具合は解消。
この場合、最初に見つけた原因への対処を行った結果、不具合の発生原因が取り除かれた事になります。しかし、真の原因がわからなければ、また同じ不具合が起きる可能性があります。ここで登場するのが「5つのナゼ」です。先ほどの不具合報告に5つのナゼの要素を取り入れると以下のようになります。
①事象:製造しているパーツにヒビ割れが生じる不具合が発生。
②原因
(1)ヒビ割れの原因を調べた結果、機械の歯車がわずかに欠損している事が判明。
(2)歯車欠損の原因を調べた結果、機械ベルトに異常振動が発生している事が判明。
(3)ベルトの異常振動原因を調べた結果、オイルが規定量未満まで減少している事が判明。
(4)オイル量減少原因を調べた結果、前回点検時にオイルを補充していない事が判明。
(5)オイル補充未実施の原因を調べた結果、マニュアルに不備があった事が判明。
(点検マニュアルではオイルが規定量を下回っていた場合のみオイルを補充するよう規定されており、点検時にオイルを毎回規定量100%まで補充するルールにはなっていなかった。)
③対策:各パーツの交換、オイルの補充、及び機械点検マニュアルの改定を実施
④結果:パーツにヒビが入る不具合は解消
このように、原因の原因の原因の原因は?と深堀していく事で、真の原因へたどり着く事が出来ます。尚、「5つ」という数字は絶対的なものではありませんので、4つになる場合も6つになる場合もあります。大切なのは考え抜く事です。
5つのナゼで気を付けること
この分析を行うにあたってはいくつか注意すべき点があります。
あなたが製造ラインの責任者だったとして、先ほどのようなパーツのヒビ割れ原因をメンバーに確認するとします。「なぜひび割れは起こったんだ?」「その原因はなんだ?」「その原因の原因はなんだ?」と質問をし続けていれば、メンバーは執拗に叱責されていると感じるかもしれません。特にこの「5つのナゼ」という手法を知らないメンバーに対しては、事前にこの手法がどういうもので、どのように使うものなのかを事前に説明するとよいでしょう。
もう1点は、「5つのナゼ」による分析は、もともと製造業で生まれた手法という事もあり、サービス業では少し使いづらいという欠点を持っています。工場機械であれば「歯車が欠けている」「オイルが減っている」という様にしっかりと目に見える、ある種分かりやすい事象が観察できますが、これがサービス業などの場合だと事情が異なります。次回のコラムでは、サービス業における5つのナゼによる改善事例を私の実体験をもとにしてご紹介したいと思います。