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”安かろう悪かろう”にならないコスト削減のポイント

2017年4月28日

前回のコラム「価格決定の仕組みを考える」で、製品の品質を下げずに売り手の製造原価を下げる方法の存在について触れました。今回はその具体例に触れながらコスト削減のポイントを考えてみたいと思います。

原価の全体像を把握する

まずは原価の全体像の把握に努めます。あくまでも大まかにで構いません。ここではチラシなどの印刷物の場合を例にとって考えます。

・原料費 (紙・インク)
・加工費 (製版・印刷・断裁)
・納品費 (梱包・輸送)
・設備費 (印刷機・断裁機・工場)

ある程度原価の全体像がイメージできたら、それらの項目を2つの視点で見るのがポイントです。

ポイント① 製品の品質に影響を与えないもの

先ほど挙げた項目の中で「製品の品質に直接影響を与えない項目」をピックアップします。

・原料費 (紙・インク)
・加工費 (製版・印刷・断裁)
・納品費 (梱包輸送
・設備費 (印刷機・断裁機・工場)

梱包や輸送方法などが変わっても、製品自体の品質への影響は無いか、あるいはごく僅かです。梱包形態や輸送方法などで、変更しても支障のない部分、あるいは譲歩できる部分はないかどうかを考えてみます。下のグラフは、ダンボールの製品価格がどのように構成されているかの一例です。

ダンボールの様に、比較的かさばり、かつ単価も低い商品は、製品価格に占める送料の割合が高くなります。ダンボールは『空気を運んでいるようなもの』とよく比喩される位、輸送費の負担が重い製品の代表格です。反対に、「スマートフォン」や「半導体」など、単価が高くてかさばらないものは製品価格における輸送費の負担は軽くなります。
ダンボールの品質を下げずにコストを削減するポイントは、「納品場所の近くに工場を持っている会社を選ぶ」という事にあります。

この他にも、梱包形態を見直す事でもコスト削減が図れる可能性があります。売り手企業に相談してみると、目からウロコな思わぬアイディアが出てくることもあります。

ポイント② 製品を作っても作らなくても発生する固定費

次に、「製品を作っても作らなくても発生する固定費」をピックアップします。

・原料費 (紙・インク)
・加工費 (製版・印刷・断裁)
・納品費 (梱包・輸送)
・設備費 (印刷機断裁機工場

自社工場で印刷機や断裁機を保有している以上、仕事があろうがなかろうが家賃や減価償却費などが固定費用と発生しています。つまり、工場や機械を休ませておく位なら、多少粗利を削ってでも受注した方がメリットが出ます。例えば印刷工場だと、年末に差し掛かる時期には「カレンダー」や「年賀状」といったいわゆる季節物と言われる印刷物の需要が集中します。カレンダーや年賀状は少し極端な例ですが、ほとんどの業界には多かれ少なかれ繁忙期と閑散期が存在しています。

下の図はある工場の年間稼働率の推移を図にしたものです。グラフが赤くなっている時期が繁忙期、青くなっている時期が閑散期と言えます。この工場では、カレンダーなどの季節物需要で年末の稼働率が高く、次いで年度末を迎える時期の稼働率が高くなっています。つまり、グラフの青い時期に製造できる様にすれば、品質はそのままに安価な製品が購買できる可能性が高くなります。

年間稼働率(例)

 

ですが、12月に必要な製品を、閑散期を狙って8月に調達しておくのにはリスクも伴いますし、保管費用もかかります。次に示すのは、この工場の4月の稼働率グラフが下の図です。1ヶ月間の中にも繁忙週と閑散週の波がある事が分かります。

 

1ヶ月間の中で閑散期を狙うという方法があります。発注時期をずらすというよりは、納期に余裕を持つ事で、コスト削減が図れます。4月12日に発注をして4月16日迄に納品するよう求めた場合、工場側は稼働率が高かったとしてもその時期に製造を行わないとなりません。ですが、4月1日に発注をして、4月16日迄に納品するようもとめれば、工場側は稼働率の低い時期に製造を行う事ができます。納期に余裕を持つという事は、コスト削減において意外と大きな効果を生むことがあります。

このように、品質はそのままにコスト削減を成功させる事はアイディア次第で充分に可能になります。しかもこれらの方法は、売り手の利益を削ってもらうというものではないので、良好な取引関係の構築にも貢献する事ができます。皆様の会社でも是非試してみて下さい。

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